一般社団法人 PPI JAPAN

治験・臨床研究を学ぶ

はじめに「臨床試験」、「臨床研究」、「治験」という言葉について整理してみましょう。

新しい治療法などの安全性や有効性を調べるために、人を対象として試験をする必要があります。この試験を臨床試験と言います。

「臨床研究」は、病気の解明、病気の予防・診断・治療の改善、患者の生活の質の向上などを目的として行われる、人を対象とした医学研究のすべてを指します。臨床研究には、臨床試験と治験が含まれます。(この情報は「国立がん研究センターがん情報サービス」の出典で、https://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/ct_qa01.html#qa179よりご覧いただけます。)

臨床試験の枠組みの図

レイサマリーについて

臨床試験が終了すると、多くの場合、その試験の内容や結果は医学論文として公表されます。このような論文は専門家のために書かれるもので、患者・家族や市民のみなさんにとっては読みやすいものではありません。一方、試験の内容や結果を誰もが読んで理解できるようにまとめたものをレイサマリー(Lay Summary)と呼びます。

レイサマリーのレイは法律や医学の専門家でない一般市民のことを意味し、サマリーは要約もしくはまとめを意味します。つまり、レイサマリーは一般の人向けの要約で、特に臨床試験の結果に対して用いる用語です。

欧州ではすべての臨床試験に対してレイサマリーの作成が必須となっており、臨床試験参加者だけでなく誰もがレイサマリーを読むことができます。日本ではこうした制度はなく、誰もがレイサマリーを自由に見られる状況にはありませんが、2023年1月24日、厚生労働省が通知「治験に係る情報提供の取扱いについて」を発出したことで、患者・家族や市民のみなさんがレイサマリーを含む臨床試験情報にアクセスできる環境が徐々に改善されることが期待されます。

レイサマリーの作成について

「レイサマリー作成の手引き」

PPI JAPANは、レイサマリーを作成したいと考える企業・研究機関のみなさん、レイサマリーについて知りたい患者・家族や市民、医療者のみなさんに向けて、「レイサマリー作成の手引き」を作成、提供しています。

PPI JAPANはこの手引きを参考にレイサマリーが多くの臨床試験で作成されることで、様々な立場の人々へのメリットや価値につながると考えています。

患者・家族にとっては自信が参加した臨床試験の結果を知ることができるなどのメリットがあり、医療者にとっては患者に対する試験結果説明の助けとなります。また、すべての関係者に関わる社会的価値として、臨床試験結果の情報が社会に還元され、情報の非対称性の改善や臨床試験への理解が進むことなどが挙げられます。

お読みいただいた際、何かお気づきの点がありましたら、是非、共有ください。この手引きをよりよくしていくため、様々な立場の方からのコメントをお待ちしています。この手引きを参考に臨床試験のレイサマリーを作成された場合、差し支えない範囲でその事例を共有いただけるとありがたいです。

「レイサマリー作成の手引き」の歩み

PPI JAPANは、患者・家族や市民のみなさんが臨床試験の計画や実施状況はもちろん、結果についても知る権利があると考えています。そこで欧州では一般的となっているレイサマリーに目を向け、日本での周知・普及の第一歩のために2022年6月、ワーキンググループを設置しました。この活動として、欧州のグッド・レイサマリー・プラクティス(Good Lay Summary Practice:GLSP)を基準に、日本の実態に合わせたレイサマリー作成の手引き(第1版)を作成しました。

手引きの作成では、まず実態把握と事例分析によりレイサマリーへの理解を深め、草案を作成しました。草案段階では、企業、患者団体、規制当局、アカデミアなど様々な立場の方との勉強会やワークショップを通じ意見をいただきました。「レイサマリー作成の手引き」(第1版)は、産患官学共創の結果、完成しました。本手引きの作成にあたりご尽力いただいた関係各位に厚く御礼を申し上げます。

PPI JAPANは、今後、この手引きをもとに様々な学習や議論の場を設けていきます。当団体主催のイベントや学会等での講演につきましては、このホームページ上でも案内します。

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